Klangwolke ABC

2012 Social Participatory Media Art


Special Web Page: http://www.aec.at/klangwolke/en/participate/soundcloud-abc/



1979年。Ars Electronicaの歴史がスタートした。リンツ市民がラジオを同じチャンネルに合わせることで、リンツの街の至る所に音のカーペットを敷き詰めた。市民が自ら「音」という情報を獲得し、参加することで、一つの大きなサウンドスケープが創造されたのだ。



2012年。情報技術の発達によって情報が自由に行き交い、ソーシャルメディアは従来の枠組みにとらわれない人と人のつながりを可能にしている。世界中で様々な既得権益に対する「デモ」が繰り広げられ、その活動の引き金にソーシャルメディアが影響を与えた。一方で、Fukushimaの原発事故のような世界的惨事は、テクノロジに支えられている現代社会への警鐘のようにも見える。情報とは何か、国家と何か、個人とは何か。情報と、メディアとガバナンスに関する興味深い出来事が次々と起こっている。



この状況の中で、「文字」は世界にどう働きかけているだろうか。Googleは文字を介して情報獲得するシステムで情報世界を網羅しているし、私たちは電子メール、TwitterやFacebookなどの文字サービスを介して他者とコミュニケーションする。私たちはこれまでにないほど文字に接している。



Klangwolke ABCは、ラジオの周波数にインタラクションするキャラクタを人々が創造し、それを参加者全員でドナウ川に集めることで巨大な文字の銀河を作り出す。Klangwolke 2012の核となるネットワーク時代の「文字」に着目した社会参加型プロジェクトである。



Klangwolke ABCでは、LEDとラジオレシーバーから構成するキャラクタワークショップキットをデザインした。参加者自らがアルファベットキャラクタを選び、そのキャラクタを組み立てて、自由にパーソナライズする。文字通り、一つ一つのキャラクタは、ユニークなキャラクタを形成する。創造されたキャラクタは、データベース化され、参加者が生み出すKlangwolkeフォントを構築して行く。オンラインサービスであるCharackterBookは、参加者の生み出すフォントをブラウズ、情報発信し、社会アクションを促す、言わばmicro facebookとなる。一人一人が生み出したキャラクタは、他者と協調することで、単語となりメッセージとなる。Klangwolke ABCでは、文字と文字(人と人)の組み合わせでできる「メッセージ」を募集する。(http://www.aec.at/klangwolke/participate/soundcloud-abc/を参照)



Klangwolke ABCで生み出されたキャラクタは、メディアや都市をハッキングする。文字で書かれるありとあらゆる情報は表情のないタイプフェースではなく、カラフルでデモクラティックな表現に置き換えられて行く。ニュース情報、街のサイネージ、アルスエレクトロニカフェスティバル2012の様々な情報がKlangwolke ABCによって再構成されてゆく。



そしてKlangwolkeの当日。街では、Klangwolke ABC Paradeが繰り広げられる。
そして、日が沈むにつれてドナウ川沿いに無数のキャラクタが集い始める。それは、シングルのキャラクタかもしれないしメッセージかもしれない。1979年に、ラジオの周波数をあわせたようにradioの周波数に呼応するアルファベットの宇宙が広がる。音に反応したり、それぞれの文字に反応したり、グループメッセージとしてそれらのLEDに灯りがともるのだ。それは、文字であふれる情報社会全体を浮かび上がらせるかと思うと、あるとき突然、強烈な個々のメッセージとして浮き上がる。



Klangwolke ABCは、文字を単なる情報でなく、人々による実際のタンジブルなアクションに繋げ、人々が自ら生み出す「今」を浮き上がらせるのだ。



文字の歴史を見たとき、白川静は「漢字」にて漢字の説明を次のようにしている。「漢字は形をもつ表意文字であり、その形は、漢字が成立した時代の人びとの生き方や考え方を、具体的に示している。それぞれの文字は、その当初の形をなおもちつづけながら、みずからの素性を語りたいと欲しているようである。(白川静:「漢字」1970 岩波新書)」
文字は、世界の文化や風習を詰め込む、マジックコンテナだったのだ。



一方でAlphabetには民主性がデザインされているように思えてならない。アルファベットは一つ一つでは意味がない。他のアルファベットと出会い、新しい意味を作り出す。アルファベットは常に他のアルファベットを探し、出会いたい欲求を押さえられないのだ。その個であるアルファベットに表象文字のような奥行きを持たすことができないだろうか?



Klangwolke ABCは、文字の新しいフォームを示す。ワークショップで創作されるキャラクタは、クリエイティビティとアイデアで溢れ、個が醸し出す世界が広がっている。それぞれのキャラクタには、その人の嗜好、文化、技術やものの見立てが詰まっているのだ。更に、Klangwolke ABCで生み出されるキャラクタで文字情報を表現すると、通常のタイプフェースでは隠れてしまう情報の真意が、その表現のギャップによって暴かれるようである。情報とは何か。Klangwolke ABCは、情報の発信者とキャラクタの創造者を一致させ、彼らのエモーショナルな欲求をKlangwolkeというフィジカルな「場」に集めることで、情報の原初のかたちをも表現するのだ。



このようにKlangwolke ABCで再発見された、マジックコンテナとしてのキャラクタは、2012年にAECで開催予定の展覧会のテーマで更に掘り下げられる予定である。Klangwolke ABCがどう社会に介入したか。そもそも文字とは何か。世界はどう記録され、マジックコンテナは何を伝えるのか。そのマジックコンテナと人はどう接してきたか、キャラクタという容器を使って伝えたい「魔法」とは何なのか、探求する。



2012年、Klangwolkeで生まれたKlangwolke Fontはオープンフォントとなり、実社会でアクションするためのシンボルとして、その時代時代の気配を運び続けることになるのだ。


Klangwolke ABC (2012) from h dot o on flickr.


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